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2008年2月 4日 (月)

死を覚悟した瞬間-熊の餌

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でっかい熊は逃げていった。
ここで大方の釣り師は藪から此方を視ているかもしれない熊を恐れ竿をたたみ早々と退散するだろう。

生来、自然、野生動物に人一倍好奇心が旺盛な愚生はこの熊の奇異なる行動に大いなる疑問を抱く。又二度とあのヒグマは現れないだろうと勝手にあまり根拠のない確信を抱き、用心深く釣りを再開し、熊の痕跡をチェックする。
熊と出遭った場所から泳いできたと思われるポイントに釣り下がる。同じ様に素晴らしいポイントの連続する流れだ。

所々に先ほどの熊が川から岸にあがり大きく身震いした痕が点在しており、川原を何度も行き来したと思われる出来たての大きな足跡、水飛沫があちこちにみられた。案の定、魚は警戒して全く食い付いてこない。

熊もきっと寒いに違いない、長時間、川に入っていられないのだろうが不思議な行動だ。

何故、熊が寒中に川の中を真剣に顔を沈めて泳ぎ、潜ったりしていたのだろうか、そして川原を何故、何度も往復していたのだろうか。

熊の内眼瞼にある瞬膜はお魚さんと異なり殆んど退化しているので、水中で熊の網膜に写し出される画像はオートフォーカスながらも地上と同じ鮮明な画像が得られるとは思えない。
にも拘らず、薄曇りの中、6メール先の水中から愚生のウェーダーを確認できたという事から察すると、或いは水中でも可也の視力があると判断してもあながち間違いではないのだろうか。

やがてそれらの問いに対する答えは簡単に、しかも直ぐにみつかる。

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500mも釣り下がった所で急流がゆるやかになり、川幅が広く、浅くなった所にある大岩に隠れるように又もや疑わしい’もの’が目に入る。

一瞬、又かと思ったがよく見ると全く動かず、茶色の肌に数列の綺麗な白斑が混じっている1.5m位の中動物が流されてきて大岩に引っ掛かっている。

小熊でない事を確認してから静かに近づくと、息絶えているよく肥えた70kg位のメス鹿であった。

川に半身浸かっているので当然温もりはなかったが死後強直はまだ始っておらず、左胸部の裂創部から血液が流失、血液凝固はまだみられない、つまり絶命して間もないという事である。

この冬眠前の大熊は崖から転落した大事な餌になる鹿を真剣に探していたのだろう。

でも鹿がはたして通い慣れたる崖から簡単に落っこちるものなのだろうか?

そうこうしている間に待ち合わせの時間に大きく遅れた愚生の危険を察知した友人が遠くより血相を変え走って来るのが目に入った。

                        -続く

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