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2008年7月19日 (土)

インフルエンザウィルスの逞しさ

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鴨の腸の中にいるある種のウィルスは営巣地であるシベリア、アラスカの北極圏に近い湖で便と共に大量に排出され、渡り鳥間で水系伝播を繰り返す。
そして8月になると鴨は南方に渡りを開始するが沢山のウィルスもかかえられて一緒に移動する。
その後、ウィルスを大量に含んだ湖は凍結してしまい、天然の冷凍保存状態となり翌年の春に再度ウィルスは活性化するといった、一連の循環をおそらく人類が出現する遥か前より繰り返していたのかもしれない。

その南下する鴨の腸内にいる非病原性ウィルスはガチョウ、ウズラ、七面鳥等を経由し、ときに鶏に伝播する事があり、鶏間で感染を繰り返すと’病原性’を獲得する事があり、これが’高病原性インフルエンザウィルス’と呼ばれる。

この’高病原性’とはあくまで鶏に対する用語であり、鳥インフルエンザウィルスを鶏の静脈内に接種しその致死率によって測られるのでその他の鳥、哺乳動物、まして人に対するものではない。
なぜか高病原性’という用語が一人歩きし、マスコミ関係者の無理解が混乱を引き起こしている。

その証拠に高病原性インフルエンザウィルスは大昔から発生していたに違いないだろうがその原因ウィルスが人に伝播して広がり、インフルエンザの大流行を起こした事を示す記録は見当たらない。

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しかし、豚の呼吸器上皮細胞は人のみならず鳥のウィルスに対するレセプターも有するゆえにもしも、人のウィルスと同時に鴨のウィルスが感染すると両ウィルスの遺伝子再集合体とも云われる自然界における遺伝子組み換えの様な現象が生じ、人から人への感染能力を有した強力なインフルエンザウィルスが出現する。

このインフルエンザウィルスは遺伝子を後世に残す為、あらゆる手段を駆使してコピー、貼り付け、変異を豚の細胞内で行い、遂には人を含む他の哺乳類の咽頭部粘膜に達し大量に自己複製する能力を有する、見事なまでに完成された生態系を有する、なんとも逞しい生命力のあるウィルスである。

如何にして単純ながらも、この壮大にして緻密なウィルスが出来上がったのか興味が尽きないし又、今後どの様な変異をしながら隠されている病原性を現すのだろう。

視点を変えると’地球上の生命誕生の謎’の答えの一つになるかもしれない。
今後のdna解析が待たれる。

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一方の攻撃される人間側は負けてばかりではない。
過去に大流用した抗原もインフルエンザウィルスの中に残っており、それらを含めたヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)遺伝子亜型のライブラリーが北大zoonosisの喜田 宏教授らによって既に構築され、ウェブサイトで公開、ワクチン、診断用抗原のプログラミングに利用されている。

敵をまる裸にし、次の攻撃に対する迅速な防御作戦を練っている。

それにしても随所に見られる素晴らしい洞察力に加え、野鳥を全地球的規模で踏査する行動力の伴った、スケールの大きいウィルス検索をされた見事な研究業績である。

矢張りウィルスに対し、人はまだディフェンシブでしかないのか。

              <感染症シンポジュームより>

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