エリモからアメリカへ直行便
舟でカレイ釣りの最中に突然、
「これからアメリカに行くぞー!」と船頭が大声で叫び出した。
楽しい釣りが一変した瞬間である。
夏の夕刻、愚生の釣り糸は垂れたままなのにも係わらず、突然、南東方向へ磯舟を急発進させ、滅茶苦茶なスピードで何事が起こったのか、さっぱり理解できない。
舳先に乗っていた愚生の体がいっきに45度以上に持ち上がり、何度も宙に浮き、そして船底に叩き付けられ、釣り道具類はバラバラ、海上にブイがあろうが、網があろうがお構いなし、悪い冗談でない事は直ぐに理解でき、生まれて初めて怖心をいだいた(笑)。
話は前後するが、御地では温厚、紳士で礼儀正しいコンブ取りの漁師さんともっぱらの評判の方より「釣りに行こう」と誘われたのはその日の朝であった。
浜に着くと、奥様と思しき50代の方が、
「お父さんにお酒を飲ませないでね」と恥かしそうに小声で一言!
船頭は船外機横に座る。約束通リにお酒はすすめず、楽しい語らいの中で愚生一人で釣り、ビールを飲んでいると、夕方近くになって横にあった筈の缶ビール数本がなくなっていた。
すると、その船頭の人格が激変、病的な兆候がではじめた。
先ず、眼光が鋭くなり、次に直立姿勢で背筋を伸ばし、右手を斜め前方にまっすぐ挙げ、映画の一シーンの、あのヒットラーの如く、真顔で、なにやら大声で意味不明の演説を始めるではないか!
しかも太平洋上で、
ギャラリーは一人しかいないのにも拘らずである(笑)。
そこから磯舟は前記のように、数十分間、狂ったジェットコースターより凄まじい走りを続けたのであるが結局、アメリカ大陸を発見できずに諦めたのか、酩酊運転もしだいにおさまり、遂にUターンする。
薄暮の中を無事、浜に帰って来た時、船頭の先程の鬼の形相は何事も無かったか様に、お澄まし顔に見事、復元していた。
陸から見ていたであろう、お家族からシコタマ怒られたのは何故か愚生であり(笑)、咄嗟に’済みません’と、つい言葉が出てしまった(笑)。
燃料がなくなったら闇夜の漂流、浜は大騒ぎになった筈である。
椅子代わりに使っていたクーラーボックスの蓋は割れて吹っ飛び、カレイは散乱、釣り竿はへち折れ、お尻の皮はめくれ、数日間座れなかった記憶がある。
筋金入りの酒乱とはこの事か(爆笑)!!
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コメント
命懸けでお付き合いしなければならないような知り合いが居ないのは、幸福な事なのでしようか。
でも人生を楽しくするような、落語の熊さんや八っあんのような知り合いも必要ですね。
投稿: 北遊人 | 2008年11月23日 (日) 17時23分
ハイ!
かの地は一芸に秀でている人、悪癖を有する人等、個性的で素朴な人達も沢山おられました。
この船頭さんは、普段、口数の少ない方ですが信頼はとっても厚い方です。
熊さん、八っあんはからヤクザまで人間模様をまだ書き連ねます。
ご期待の程(笑)!!
投稿: 与作 | 2008年11月23日 (日) 18時46分