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2008年12月28日 (日)

田中 小実昌の似合った時代

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何時も禿頭にイスラムハットもどきをかぶり、爬虫類の様な定まらない視線、照れ屋だが常人の数倍の好奇心を持ちあわせた田中 小実昌が亡くなったのはアメリカのL.Aだったらしい。

その昔、L.Aのまだ活気のあったリトル東京界隈にあった薄汚い日本食風何でもありの居酒屋で一人で飲んでいた所、手垢にまみれた色紙らしいものに斜めに小さく、個性的な書体で田中 小実昌のサインがあった事を憶えている。

その後、エリモの寒風吹き荒れる漁師が集う賑やかな居酒屋、そして雪深い小樽の赤提灯でもで同様の書体、筆跡でサインを見かけた。

世界中をジプシーみたいに放浪したとんでもないオヤジであり、愚生の先回りをしていた、にくい作家でもある。

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東大哲学科を中退、常人では計り難い独特の感性を持ち合わせて、気の向くまま世界中の酒を呑み、世界中の女性を見て回ったのか、直木賞なんてめんどくさいものは必要なかったのかもしれない。

この田中 小実昌の視点、感性は実に興味深い、晩年の科白などは哲学者の如きであり、17世紀、道南にまで来られた円空とつい比較してしまうが、宗教者と作家という垣根はあるにせよ、ある種の共通した心情があるかもしれない。

「健康のためなら死んでもいい」等のフレーズは、あの善人なおもて往生をとぐ、いわんやなんたらの・・・悪人正機説に匹敵する名言である。

その意をいまだに理解し得ない了見の狭い愚生、相変わらず悪徳な人生を歩んでいる。

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生き物の基本

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ドサンコ、何んともひびきの良い単語だ。
この馬は賢い、さらに忍耐強く、耐病性に優れ、服従心があり粗食に耐えうる。
アメリカの乗用馬であるスタンダードブレット、クォーターホース種らの人工的に創られた品種と異なり、運動器システムは合理的に出来ており、体型はすこぶるカッコ悪いが、生物学的にはあらゆる面で優れ、理にかなった馬体を有している。

対極に位置するサラブレットは遺伝学を否定され、’改良’の名目で人間が勝手に創った動物だがそれを無知な競馬評論家等は芸術品などとのたまっている悲しい現実も片方にある。

サラブレット種として固定されて300年位しか経たないが、徹底した競争能力の追求と云う美学のもとに、本来生物としてあるべき、無限に近い遺伝子の選択性を否定される運命を背負っている。

ヒトでは考えられない事だが、無制限に近親交配が行われている。
果たして何処まで許されるのか。

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過去から現在に至るdna2重ラセンの中に含まれているであろう生命に対する負の因子が今後も増え続けたなら数千、数万年後の馬達にいかほどの形態的変化が生じるのか、その危険性を誰も議論しない、或いはあえて避けているのかは分らない。

確かに心肺能力は優れているが、免疫系の数値はドサンコの半分程度であり、継代するに今後、さらに低下する事は十分考えられる、何より生存する為の必要最小限のパーツすら持つ事を拒否されている生物でもある。

植物同様、動物も人手が加わらないと至極丈夫な事は高校生が教わる生物学の基本中の基本だろうが、永年かけて緻密に組織化されたdna配列を変更する事があたかも最先端の学問とする昨今の潮流に対してドサンコは強く警告を発している様にも思える。

サラブレットに限らず数千、数万年後に奇形続出なんて事は想像したくもない。

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2008年12月20日 (土)

さあ、どうなる日本

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ナチスを恐るべき近代人と呼び、戦前の日本の軍国主義者を「太古の心」を失わなかった質朴な感性の持ち主と称えたのは故江藤淳氏だが、これを姜 尚中は酩酊気味の贔屓の引き倒しと痛烈に批判している。

ラバウルに出征していた愚生の父は
「海ゆかば 水漬く屍 やまゆかば 草生す屍」をよく口ずさんでいたが、何某かの当事者ならではの共通する心情があったにせよ、思い入れと現実の政治をごちゃ混ぜにしてしまっては御笑い種であろう。

司馬遼太郎は東条英機を、ラジオから流れた戦陣訓を聞いた普通のおじさんが「アホかいなと言っていた」と、見事に一言で、最大限の批判している。

又、権威に依存していた日本人が無権力になった時の典型的な例がある。
丸山眞男はシニカルに、「戦犯裁判で土屋は青ざめ、古島は泣き、ヘルマン・ゲーリングは哄笑する」とナチの傲然たる、ふてぶてしさを持つ空軍元帥と巣鴨の住人の心理的な比較をしているが、我々日本人は決して巣鴨の戦犯の心情を笑えまい。

五木寛之は故城山三郎氏の事を’裏通リの司馬遼太郎’と称しているが、その故城山三郎氏の「落日燃ゆ」には東京裁判で、戦争を避ける為に尽力し、権威の依存性から切り離されても、なおしっかりと国家と自分を見据え、死におもむいた広田弘毅の孤高な政治家としての姿が描かれている。

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ところが今の経済危機とあいまって、東条英機を甦らせるある種の昔から日本にある、原罪的時代の空気みたいなものが再発生し、未成熟な田母神元航空幕僚長のおろかな行動をあるいは後押ししているのか。

城山三郎、筑紫哲也加藤周一らの羅針盤を失ってしまった不沈船日本丸の漂流記の行く末は?

右傾化、経済危機、

さあ、どうなる日本、既に燃料切れ、座礁直前なのか。

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2008年12月15日 (月)

イラク人の靴

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イラクで演説中のブッシュに対し、「キサマは犬だ、人殺しだ!」と、最大限の侮辱を込めた罵声が浴びせられ、そのイラク人記者が靴をブッシュめがけて投げつけたというcnn報道が先程あったが日本の民放を見る限り、その言葉は省略され、逆にブッシュの下手なジョークだけを流していた。
これでは歪曲され、真意は伝わらない。

"This is a farewell ... you dog!"
While pinned on the ground by security personnel, he screamed:
"You killed the Iraqis!"

NY9.11からアフガン、イラク戦争に突き進み、経済停滞を避ける為に、低金利によるバブル、サブプラ問題、ビックスリーの解決云々に目を奪われている間にあのトヨタが赤字、日銀短観でも最悪の報道。

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根底にあるのは間違いなく、ブッシュの無能、体たらくである。

ブッシュが大統領に就任したとき、「これは危ないぞ」と指摘した政治学者がいたが、案の定、世界の経済をぶっ壊してサヨウナラである。

今、マンハッタンでは空き店舗が出始め、失業者があふれ、ブロードウェイミュジカルのまばらな観客の大方はソヴィエト、アラブ人だそうで一昔前では考えられなかった現象が起きている。

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アイスランドは国自体の存続までもが危ぶまれ、韓国ウォンは暴落、それ以上酷い事に、日本では漢字の読めない能天気な首相が地獄へと導き、時代の空気が一変しつつある。

アメリカの幼稚な低金利政策に加えて馬鹿げた市場放任主義、どうやら今の世界経済の危機は、余りにも単純な人災の様相を呈している。

イラク人の靴には、深い、苦悩しきった想いが込められている。

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2008年12月11日 (木)

ソウハチカレイと舌平目

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出席者はすべて夫婦、婦人はイブニングドレスで着飾っていた。
ご主人が厳ついお顔のスペイン人御夫婦、キザな奥さんのアメリカ人御夫婦、英語を喋ろうとしないフランス人御夫婦、英語の喋れないとても美しい奥さんのイタリア人御夫婦、そして緊張する我々日本人夫婦が円卓を取り囲み、主催者のスピーチ、セレモニーの後に初々しく厳かに出された、前菜として盛り合わせの中に舌ビラメのムニエルもあった。

ワインとともに次々と出されるディッシュの後、ライヴ演奏でダンスが延々と夜中まで続く・・・。

1993年12月7日、テキサスからシカゴ、ヒースロー経由でスイスのジュネーブに入り、レマン湖近くのインターコンチネンタルホテルで開催された晩餐会で食した事を思い出す。

アメリカでもフォーマルなパーティーはヨーロッパ同様であったが、田舎と言ってもフェニックス、サンアントニオ、アルバカーギ辺りでは今でもウエスタンスタイルが断然多く、ダンスになるとプロのライヴでギター、バイオリン、バンジョー等で、お馴染みの演奏がはじまり、カウボーイハットと革ブーツが似合う御婦人の方々が大いに場を盛り上げている。

ちなみにスイスでの出席者90名程の中で黒人はザンピア人たった一人、平服はそのザンピア人と愚生のみであった(笑)。

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2008年の今日、ストックホルムでノーベル賞授賞式後のパティーが放映されていたが、その中に舌ビラメのムニエルもあり、昔の事が懐かしく思い起こされ、つい余計な事を書いてしまった。

舌平目のお味はまあ、こんなものか、てな感じ、例えるなら、たまに我が家で翌朝、強制摂取させられる出来そこないのシチュウを固まらせた様なもので、同じカレイでも白老沖で鼻水をすすりながら釣れたソウハチの糠漬けの方が数段旨いのは云うまでもない。

道南のヒラメ釣りの船頭さんに舌平目について聞いたら、
「シラネエ、ソッタラもの、今度デケイ平目が釣れたら、口ん中見とく」ときたので、つい、うっかり、
「ベロちょん切って、焼酎に漬けとけ、ウメーゾ!」と。(笑)

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2008年12月10日 (水)

加藤周一さんの視点

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司馬遼太郎の、『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』に登場する倒幕派の坂本龍馬と、対極に位置する幕府に雇われたテロリスト集団の土方歳三らを同列に並べて英雄視するスタンスは極めて不思議な日本人の心理であるとしている。
維新に対し、明確な政治心情があれば両者の主義主張に組する事は出来ないし、ヨーロッパではありえないと断言している。

一例にすぎないが、故加藤周一氏の海外から視た日本人論に新鮮な驚きが多々あった。

今、手元に初版から8巻までの「夕陽妄語」がある。
時には人生の指針となり、時には反発もあり、素晴しい宿題を残してくれた。

その昔、NHKの憲法改正の討論番組で、京大教授の高坂正堯氏と佐々淳行氏の硬派の論客らを相手に見事に完膚なきまでに論破してしまった故加藤周一氏の言葉の力、凄みと同時に、言葉を失した両者の茫然自失とした表情がいまだに忘れられない。

一つだけ確信を持って云える事がある。
現在の政治家、特に、安倍晋三、福田、麻生らに故加藤周一氏のせめて半分でもよいからその見識、洞察力が具わっていたなら日本は今とは違った方向に向かっただろう。

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昨今、田母神元航空幕僚長なる人物が大きな勘違いをして登場している。
田原総一郎は彼を「文献すらまともに読んでいない」と酷評しているが、意図的に歪曲されたものなのか、或いは知識不足なのか、理解困難な仮想史が彼の思考回路の根底にあり、脆弱な思想を形成している。
だが、日本人の半数近くが氏の意見に賛同し、果ては核武装論まで飛び出す昨今の右傾化を、加藤周一氏は的確に予見されていた節がある。

殉教者気取りだが退職金は欲しいとのたまい、立場、時期、論拠等どれをとっても間が抜けおり自衛隊トップですらこの程度の判断能力、まさに人材枯渇、これぞ真の日本の危機である。

国防思想に思いをはせて、入隊した純粋な若い隊員が哀れにも見える愚行である。

矛盾を抱えるにしても、九条をまもる会の存在意義もたかまるのか。

            
                         瞑目、そして合掌

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2008年12月 7日 (日)

アイヌとデルス・ウザーラ

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昨夜、NHK,BSで放映された、史実を元に脚本された黒澤 明監督の「デルス・ウザーラ」に登場したご老人と、愚生の知っている北海道の昔のアイヌは地理的にも近く、昔から交易もあり、dnaレベルでも近似していて当然だろうが、改めて習慣も含めて、酷似している事に驚いた。

ソ連のシベリア沿海州に住み、天然痘で家族を失い、天涯孤独で、奢らない、朴訥、無垢な猟師のデルス・ウザーラが持つ研ぎ澄まされた五感、経験論をベースとして展開している。

北海道のアイヌも同様に、その昔は純朴そのもので、結核の集団感染もあり、悲惨な生活史も一部にあったが、大変優れた狩猟本能を持ちあわせている。
例えば狩猟の際、和人らが何人掛かっても捕獲出来ない熊を一人で単発銃一丁かかえて射止める能力、勇気があったと聞いている。

似たお話をアイヌの長老から伺った事がある。
真冬に、一人で雪深い山奥に入り、捕えた獲物だけで喰いつなぎ、数ヶ月後、沢山の毛皮と干し肉を引っさげ悠々と引き返して来る、たくましいアイヌが実際にいたというから日高版デルス・ウザーラである。

新田次郎著、「八甲田山死の彷徨」でも紹介されている遭難の際には、極寒、大雪の中で救出は困難を極めたらしいが実際に川水に浸かり、捜索したのは渡島から行った北海道のアイヌだったという記録も残っている。

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故黒澤 明監督の好きなキーワードである、火、風、山を人に喩えて表現していたが、それをアイヌは神に喩える独特な世界観がある。

先住民族の生活慣習を単純に、アニミズムだの、縄文文化などと言い表してしまっている、えせ文化人類学者らの活字が、時に誤った差別感情を助長している馬鹿げた図式も御地には見え隠れしている。

せめて北海道に住むアイヌの方々に、鹿猟、熊猟、鮭漁くらいは開放してもよいのではないかと、ふと考えもした。

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2008年12月 3日 (水)

ビル・エヴァンスと西行の枯葉

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ヘロイン、コカインが最後まで付きまとった、ビル・エヴァンス、しかしながらそのジャズピアノは今なお、世界各国の奏者に大きな影響を与え続け、その「枯葉」も形を変え、新ヴァージョンが次々と発表されている。

西行の句に「枯葉」という単語はそれほど用いられてはいないが、
平安時代の大坂を詠んで、

   津の国の 難波の春は 夢なれや   
   蘆の枯葉に 風渡るなり        <新古今より>

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直線的に突き進む西洋、片や、変化なく、循環を良しとする東洋。

西行を後世の人は矛盾の人とも言っているが、優れた芸術は聖と俗の深い矛盾から生まれるのか。
矛盾する自己と、自然を深く眺めているが、それを梅原 猛氏は天台仏教の止観の世界観だと言っている。

白洲正子は自著「西行」の中で、空気のように自由で、無色透明な多くの謎に満ちている人と表現している。

「枯葉」の中に輪廻の思想が見え隠れしている東洋、一方、アングロサクソンが勝手に世界中に撒き散らした’グローバリゼーション’なる猛毒を含んだ単語同様、徹底的に突っ走る西洋。

21世紀はこの解毒効果だけではない循環の思想が断然面白いはずだが。

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2008年12月 1日 (月)

エリモの人生劇場

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「バカヤロー、モサモサしやがって!」と気合十分の父さん、

逆に、「こったらべっこしか採れないで、エバルナー!」と、やり返す母さん、

いつも元気の良いコンブ採り漁師の父さん、
夜明け前まで、飲んでいたお酒が利きすぎたのか、コンブを採り終え、自宅の前浜に船を戻し、急いで、手際よく、コンブを舟から降ろす作業中に事件はおこった。

頭に血がのぼり、間髪を入れず、「コノヤロー!」と叫び、長い棒状の重たそうな鉤を母さんめがけて、おもいっきり振り回すが、さっと身をかわし、弾みで船上でドタッとカッコ悪くひっくり返る父さん、

母さん、見事な身のかわし方、

さすが年季がはいっている!!

二の矢は打たず、捨てゼリフを吐いて、直ぐに出漁する父さん、

波打ちぎわで、舟から昆布を降ろすお手伝いをしていた愚生、

瞬時の人生劇場をかいま見、唖然!!

その後、2,3回、船でコンブを運び、広いコンブ干し場は綺麗な縞模様の出来上がり、やがてコンブ小屋で全員揃って遅い朝食の席となり、再修羅場を覚悟する・・・・が、
.
「ハイ、お父さん」と言って、ほほ笑みながら缶ビールを差し出す
母さん、

「ウン」、と言って隣席で目尻を下げて受け取り、嬉しそうに
飲み干す、父さん、

愚生、再び、唖然(爆笑)!!

7月、快晴の朝、コンブ漁の一シーンであった。

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